148 桑玄先生の話を聞きに天神のひな祭へ行ってきたのです。



天神のひな祭というイベントが開催されまして、
その中に「和文化セミナー」というものがあり
2日間に分けて5講座開かれました。

最後の「日本の文房具」というセミナーを
岡桑玄先生が担当されていまして
駆け込みで受講(?)させていただきました。
すごく面白かったです!






桑玄先生は■彩ころ日記そうたさんのお師匠さんで
昭和の三筆・手島右卿先生のお弟子さんに当たります。
かねがね作品集にも触れさせていただいて
ものすごい先生だ!とガクガク震えていたところ、
今回の催しをそうたさんに誘っていただいて
なんとか潜り込めた、という形でした。






講座の内容は日本の文房具とのことでしたが、
文字という文化とその成り立ちから話がはじまりました。
まず甲骨があり、金文に変わり、






隷書、木簡と変化していく過程を
直筆の書と併せて丁寧に説明するところから始まりました。

先生はもともと中学で英語を教えていた経歴があり、
そのせいもあってか、とても話が聞きやすく
すごく面白く盛り上げてくださって
ずっとうんうん!と首を縦に振りながら聞いていました。






2000年前の実物である木簡も持ってきてくださっていて
すごく貴重な品を直に見れたりと、すごい内容。

この催しはあまり周知されておらず
席数も25席と少なめになっていて
本当にもったいなかった!
そのくらい充実した1時間半でした。






文字が明確化したのちに、書としてのアプローチが発生して
そのなかでの変化についての説明もありました。
難しい言葉は使わずに「ぐわー」とか「ずんと詰まった」とか
オノマトペりながらの説明で、すごくわかりやすく聞きやすい、
その場に居た誰もが知らないうちに話に聞き込んでしまう感じで
先生は語り口も抜群に達者ですごいなぁと思っていました。






後半には実際に硯を使って墨を擦っていき、






どうやって書いていくかの実演がありました。

墨を擦るのは5分ほど時間がかかっていたのですけど
その間も手を動かしながら「大きい作品を書くときは大量の墨を使うわけですが、
機械で刷っていくとどうにもいけない。人間の手で強弱を付けることで墨は自然な黒を出してくれる。
これは本当にすごいことで、人間ってやっぱり優秀なのだなと思います」と
いろんな話を平行させいて、見てる人に「待たせている」という感覚を
作らせることがまったくなかったです。
この進行の仕方の慣れ具合も本当に見事でした。






できあがった墨で、さっと書いていきます。

「人間、やっぱり喜怒哀楽といいますから
『笑う』という字を書いてみましょう」






「どうでしょうか、笑ってる感じがでていますか?
これを玄関に張ったら仕事や学校に行く際、
にこっと笑えて良い一日が過ごせる。
そんな感じの『笑』うという字です」

先生の話し口から伝わる朗らかさと、
何十年も研鑽した技術に裏打ちされた文字が
すごく良い作品を生み出す実例を目の前で拝見して
若干頭があばば気味になるくらいには衝撃的でした。

この笑という字、すっごくいいです。
仕事場に飾っておきたいなと思うくらい!

正直、「文字を書くだけなら誰でも出来る。
綺麗な字が欲しいならフォントがある」という時代に入ってきて、
いろんなものに代替が効く世の中で、
シンプルなものから場所を奪われていっている今、
『書の在り方とは?』を身をもって表して居るのが
岡桑玄先生なのだな、と思いました。
たぶん先生に言っても「そんなことないよー」と
元気に笑ってくれ否定してくれそうな雰囲気が
すごく健康的で、まさに老成された心身が筆を通して
紙の上に具現化している魔法めいた所行は
いろんな人の目に入っていって欲しいです。
作品もそうなのですけど、岡先生の話も
いろんなひとに聞いて欲しい!

この講座は最終的にはだいたい40人くらいのひとが
見に来たとのことで、もっといろんな人に見て欲しい!と思うのと
この貴重な席に座れたことに感謝することとで
またあばばーってなっていたりしました。
来年もこの催しがあるかはわからないのですが
岡先生が出られるのであれば是非告知させていただきたいです。






というわけで「天神のひな祭り・和文化セミナー」のお話でした。

先に書いたとおり、
講座自体は1時間半で
終わる頃には「もう終わり!?もすこし聞きたい!」
となってしまうくらい、充実した内容で
しかもこれが無料だったわけで
もっといろんな人の目にとまればと
すごく思ってしまいました。

「デジタル化」という時代の波の中にあって
「書」ということの在り方に触れる貴重な機会でした。
この存在感はいろんなことにつながるヒントになり得るもので
自分の話でいえば「何でマンガ描くのをデジタル化しないの?」という部分の
根幹を、力強く補強してくれるような講演でした。

僕はデジモノとかが大好きなのですが、
それと同じくらいアナログと言われる仕事が大好きです。
デジタルとアナログはともすれば二律背反するものだととらわれがちです。
でも僕はどちらも食い合わずに両立すると思っています。
この両輪を携えてすごい速度で先に行けることを
勉強していくためのすごく良い教材に、今回の講座はなりました。
今後も桑玄先生の話を聞く機会があれば
是非とも会場に足を運びたいです!

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