186 名人戦第3局一斉大盤解説を聞きに福岡将棋会館へいってみたのです。

■名人戦・順位戦:日本将棋連盟

現在、第71期名人戦七番勝負が開催されています。
簡単に説明すると「将棋で一番強い人を決めよう!」戦で、
200人以上いるプロ棋士のトップ10名が総当たり戦(順位戦)をし、
優勝者が名人への挑戦権を獲得します。

挑戦者と名人との対局は7番勝負で、
先に4勝を上げた方が次の1年、名人位の保持者になります。

今期は森内俊之名人に羽生善治三冠が挑戦しています。

この10年、森内さんか羽生さんのどちらかしか名人位を獲得しておらず
いわゆる「羽生世代」と言われる歴々の充実がすごいです。
特に森内さんは名人戦に向けての充実がすごく、
前期、名人戦の直前まで11連敗していたものの
名人戦は4勝2敗で防衛されていて、
挑戦者争いを全勝で勝ち上がってきた羽生さんを
撥ね除けたのはまさに鉄板流。
今年も勝ち上がってきた羽生さんと
どういった勝負になるかすごく楽しみにしています。






と、前置きが長くなりました。

名人戦7番勝負、現在までに2戦が済んでおり
森内名人の2勝で迎えています。

第3局は「全国大盤解説」があり
各都道府県でプロの棋士の方が散らばって
名人戦の内容を解説する催しが設けられていました。

ここ福岡では「福岡将棋会館」という場所で開催されるとのことで
電車で行ける距離だった僕は「指さない人間には敷居高いかな…」と
胃をきりきりさせながら初めて行ってみることにしました。
結論から書くと、若干敷居が高めだった気がします。
でも楽しかったです!






西鉄「春日原駅」から歩いてすぐの距離だったので
今回は電車を使って行ってみました。

春日原は急行が止まる駅なので
天神からも割とすぐに訪れることができます。






駅から5分ほど、まっすぐ歩いて行くと。






じゃん!福岡将棋会館です!






予想していたよりも立派な建物でびっくりしました。

初めて来て不案内だったところ
講師の方が丁寧に「受付はあちらです-」と
教えてくださって助かりました。

受付で解説入場料の500円を支払っていたところ、
ふと横を見ると中村修九段が紙を持ってぱちぱち局面を指し進めてびっくり。
アットホームどころではない距離の近さに白目をむいていました。
す、すげえ地方の将棋イベント…!!






受付する際に「写真とかの撮影って問題ありませんか?」と
聞いてみたところ、特に決まりはなかったみたいで
中村先生も「私はかまいませんよー」と
笑顔で許可してくださってひええ!!
勇気出して聞いてみて良かったです。

館内はこれくらいの広さで
2階にはお子さんたちが通う
将棋教室のスペースがあるとのこと。

今回の解説はそちらで行われました。






解説開始まですこし時間があったのでうろうろ。
おじいさま方が楽しそうに対局されています。





先日の「小学生名人戦」では
こちらに通われている大中君が
見事優勝されたとのことで
そのことが張り出されていました。

■小学生将棋名人戦:日本将棋連盟

こどもの日にNHKで放送があったみたいなのですが
録画に失敗して見れなかったのが残念です。
今の子供たちは指し手も早く的確で
僕なんかだと飛車角落ちでもボッコボコにされそう。
機会があれば是非ボコられたいです。

■道はつづいている : 福岡将棋会館ブログ
■小学生名人戦 放映 : 福岡将棋会館ブログ

将棋会館のブログでは講師の先生が
小学生名人戦の感想をまとめられていました。
コメントでは保護者の方が振り返って
お話をされています。

小学生名人戦は羽生三冠や渡辺竜王など
優勝者はその後プロになる方も多く、
これからの活躍もすごく楽しみです!






今回の大盤解説のチラシもおいてました。
僕はネットで知ったのですが、
思いの外こういった情報はネット上では少なく、
なかなかわかりづらいなと思っています。
なにかこう、わかりやすい告知スペースとか
例えばTwitterでの告知アカウントなどが
あれば便利かなぁ…。






奥の方では向かい合って座るテーブルがあり
普段はこちらで指導対局などされているのかな?
なにか別の機会があればそういった様子も見に来たいです。






電王戦のポスターも飾られていました。
このポスター、すごくかっこいいです。
どこかに売ってないかしら。






と、ふとテーブルを見てみると
なにやらマウスパッド?が。

よくよく見てみると佐藤天彦七段のサイン!
普通にぽんとテーブルにおかれてて
びっくりしました。
そういえば天彦さんは福岡出身。
なにかの機会に来られたのですね。

■佐藤 天彦 (AMAHIKOSATOh)さんはTwitterを使っています

Twitterも開設されています。






と、後ろを見てみると
中村先生が「ありゃー…」的な声を上げていました。
画面を見てみると「91手にて後手投了」と表示されており、
解説が始まる前に終わってしまいました…。

大盤解説は「次の1手」を解説の先生が読みながら
進めていくのも一つの魅力で、
名人戦は遅いと夜9時過ぎまで続くので
そのあたりも楽しみにしていたのですけど
今回は森内名人に受けがなく、
かなり早い時間での投了になってしまいました。






その後すぐに解説の時間になり、
2階の方へ上がってきました。
中村先生の「どうしようかなぁ…」という
雰囲気がもわもわしていておもしろかったです。






先ほど書いたとおり、
2階は子供教室に使われているとのこと。
壁紙がすごく明るく可愛くて良い部屋でした。
こういった雰囲気、すごくいいですね!






そうこうしていると
中村先生苦笑いの中
解説がスタート。

聞き手(?)をつとめるのは
下平雅之さん。

第46回赤旗名人でアマ強豪のすごい方です。
日本将棋連盟福岡支部の支部長を務めていらっしゃいます。

■第46期 赤旗名人決まる/将棋 下平雅之さん/囲碁 伊達昌希さん
■asahi.com(朝日新聞社):一瀬選手、格別の頂点 朝日アマ将棋名人戦で初V – 将棋
■asahi.com(朝日新聞社):第5回朝日杯オープン戦第5局 – 将棋
■下平雅之さん、奨励会三段リーグ編入試験を受験 | お知らせ|お知らせ・イベント情報:日本将棋連盟
■第31期西日本久留米王位戦で優勝した 下平 雅之さん / 西日本新聞






実際に指し手の解説に入る前に、
「先日、電王戦というコンピュータ将棋の棋戦がありまして…」と
電王戦について語り始めた中村先生。

中村先生は、電王戦5番勝負の第一局
「阿部光瑠四段vs習甦」戦で
プロ側唯一の白星を上げた
光瑠四段のお師匠でもあります。

「コンピュータ将棋で角代わりを選択したのには
理由がありまして、角が手持ちになったときに
『全盤面に角をおいた状況を読み込む』という部分を
逆手に取れる、というメリットを選択した形になります」と
先日の習甦戦を振り返られていて
なるほど、そういう理由が!と目から鱗でした。

「第三回があったとしても
私くらいの棋士が出るでは
周りも納得しないでしょう」と冗談交じりに
語っていらっしゃってましたが、
「強い強いとは思っていたけど
どれくらい強いかわからなかったから
電王戦でプロ棋士が対局したのは意義があった」(意訳)と
近年のコンピュータに関しての
プロ棋士側から見た感想などを
ぽつりぽつりとお話されていました。

こういったお話を聞けるのも大盤解説の魅力です。
NHK杯将棋でも、解説としてたびたび登場される
中村先生のトークや解説はとてもおもしろくてわかりやすく、
時々ため息交じりに話す対局の失敗談や
ダジャレ企画など、すごく楽しいです。


電王戦に関して、すこし下平さんもお話をしていて
「先日、前哨戦として『GPS将棋に勝てたら100万円』という企画を
ニコニコの方で開催されていまして、私も参加して参りました」
「へえ!そうなの!結果どうだったの?」
「あ、勝たせていただきまして…」
「へー!百万円!」
みたいなトークを中村先生とやりとり。
「勝てたら100万円」企画は2月末から3月までの
土日を使って計5日間開催されました。
その中で3人の方が勝利されていて、
その一人が下平さんだったとのこと。

僕は1日目の3人の方までしか見れなかったので
これを聞いたときにはすごく驚いてしまいました。びっくり!






そんな話をしたりしながら、名人戦の解説がはじまります。






盤をみてお気づきの方もいらっしゃるかもですが、
この盤、対局解説用に作られてるものではないみたいで、
駒が右側にしかおけず中村先生がたびたび
「あ、こっちだった」と駒を右に左に
上下くるくる回したりして大変そうでした。
会場によってはこういった慣れない作業もあって
プロの先生って大変。






時々、盤面をじっと見て読み込んだりしつつ
解説をしています。

僕は最初、会場のはしっこのところに座っていたのですけど、
盤面に角度が付くととにかく駒を読みづらくって
内容について行きづらく席を移動してしまうくらいでした。
プロの先生は解説をされる際、盤の真横に立つので
ものすごく駒が読みづらいのですけど
それを悟らせないくらいにてきぱき解説していて
こういった部分でもすごいなぁと実感。
対局だけがプロの仕事じゃないのだなぁと感心してしまいました。






途中、子供たちから
「名人の受けはこっちの方ではダメだったのですか?」という
質問が飛んできて、先生が局面を動かして検討する場面がありました。

「あ、この受けはすごく良いね!すごいねー。
もしかすると、今この手で検討していて
明日あたり新聞に君の指摘した手が載るかもしれないよ!」
と、すごく褒めていて、子供たちの実力に
「ほほえましいなぁ」ではなく単純に「すげえな!」と
思ってしまいました。
ほんとにこういった子供たちにどんどん活躍して欲しいです!

中村先生も、客席からの質問に
的確に答えてくださっていて
距離感の近さに他のイベントにはない魅力を感じました。
なかなかテレビではこういった解説は見られないですから
このライブ感はすごく貴重です。






途中、「次の一手」クイズがあったのですが
対局がすでに終わっており
クイズとして成り立ちませんでした。

普段ならこの時間までは対局が続いていて
終盤のものすごく盛り上がるところなので
クイズも盛り上がるのですけど、
そこはさすが中村先生、
「代わりのクイズを用意してきました」と
懐から事前に用意していたメモをとりだして出題。すごい!

このGW中に、東京の方で催しがあり
そちらの方に森内名人も参加されていました。

■tvkハウジングプラザ横浜将棋まつり・前編 : 日本将棋連盟ツイッター支部
■tvkハウジングプラザ横浜将棋まつり・後編 : 日本将棋連盟ツイッター支部

「名人に無理言ってお願いしちゃって
こういったゴールデンウィークの疲れが
でちゃったのかなぁ…」と3局目を振り返って
中村先生がおっしゃってました。

クイズの内容としては
「このイベントで森内さんが忘れ物をして
帰ってしまいました。忘れたのものは次のうちどれでしょうか?」
『1.傘 2.携帯電話 3.扇子 4.コート』
というもの。
なるほど、これはわからない!

答えは4番のコートだったのですが、
当日会場は晴れ渡っていて
結構日差しもあったりして
「こんな日でもコートを持ってくるって
森内さん生活でも鉄板流ですね」と中村先生。
会場の笑いを誘っていました。

ちなみにコートはぱっと見
女性物みたいな色をしていて
「女流棋士の人たちに忘れ物してない?と
聞いて回ったんだけど、どうも森内さんのものみたいで、
そこにも驚いちゃいましたねー」と先生がおっしゃってて
すごくおもしろかったです。

■第二回シモキタ将棋名人戦・前編 : 日本将棋連盟ツイッター支部
■第二回シモキタ将棋名人戦・後編 : 日本将棋連盟ツイッター支部

GW中には下北沢でもイベントがあり、
森内名人は驚異の81面差しをしていらっしゃいました。

「私も当日、下北沢にいって
指し手のお手伝いをさせていただきました」と下平さん。
下平さんは福岡在住なのですけど
GPS将棋やこういった機会にたびたび
上京されているのですね。






クイズの正解者にはDVDやハンカチ?のプレゼント。
みんな和気藹々としてすごく楽しかったです。






と、そんな感じの大盤解説会でした。

会場には将棋を指す子供たちも座っていたのですけど
どの子も大変行儀が良くてびっくりしました。
例えば、トイレに立つ際も大人のように
迷惑かからないよう中腰で移動したり
お菓子を食べるにしてもなるべく音を立てないよう
気をつけて食べていたりしていて、
「将棋をやると礼節が身につく」を
体現しているのがすごいなと思いました。

写真はないのですが、このあと下平さんと交代して
会館講師の関口さんという方が壇上にたったのですが、
とても快活でいらっしゃって
大盤解説終了後も子供たちとぱちぱち
将棋を指していらっしゃって、
この先生なら子供たちも正しく指導してくれるなぁと
ほんわか会場をあとにした感じです。

大盤解説会を見るのは初めてだったのですけど
すごく楽しく過ごさせていただきました。
惜しむらくは会場に来られていた方の数が
すごくすくなかったこと。
僕を含めて20人くらいしかいなかったので
ものすごーーーーくもったいない!と思ってしまいました。

平日の夕方5時からのスタートなので
会社勤めされている方には
すこし厳しい時間帯ではあるものの
すっごくおもしろくわかりやすく説明してくださるので
多くの方々に見て欲しいです。

今回書いた内容の他にもいろんな裏話や
「私の対局の横で藤井さんが指していたんですけど、
さばきがそれはもう見事で、自分の将棋より見入っちゃう」とか
他のプロ棋士の先生方の話などなかなか聞けないことも
たくさん聞けちゃうのですっごくオススメです。

ただ、僕みたいに見るだけの人よりも
指す人重視の雰囲気はあるのだけが
すこし敷居が高いかな?と思いました。
こう言う点ではなかなは周りの人を
誘いづらかったりするので
もう少しなにかあるといいなぁと思います。

というわけで、一斉大盤解説in福岡でした!
皆様お疲れ様でした!


■福岡将棋会館HP


シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする